FC2ブログ

2つの演奏での並び順の違い/W.A.モーツァルト : 弦楽五重奏曲 第3番 ハ長調 K.515/アルバン・ベルク四重奏団とラルキブデッリ

この弦楽五重奏曲 第3番 ハ長調 K.515は1789年の初稿ではアレグロの後にメヌエットが置かれていたらしく、それは続くK.516と同じ姿だと気付きます。

ピリオド演奏のラルキブデッリ盤では最初の姿で、モダン楽器によるアルバン・ベルク四重奏団は現代一般的な姿で演奏しています。

このハ長調のシンプルな弦楽五重奏曲が、その配置により全体像としての趣を変えるのはとても興味深いものでした。

この第2楽章にメヌエットを配置するのは珍しいものではなく、モーツァルトと時代が重なるボッケリーニも編成はチェロ×2と異なりますが多用している事に気付きます。

[余談]
ラルキブデッリ盤(輸入盤)ライナー・ノート(検証付きのブックレット)は混迷を極め、詳細に記された本文とは裏腹にその演奏時間は収録された第3番・第4番が全く同じであり、何とその両方とも間違っている上、演奏者の使用楽器までも・・と思ったら、この盤の最大の特徴である演奏順序までわざわざ間違えて記されていました。

多分、この盤を輸入盤で持ち、ライナー・ノートに記された収録曲を信じて聴いていると気付かないままなのではないでしょうか。

※各アルバムに張り付けてあるバラ飾りは"Oberholster VenitaによるPixabayからの画像"を使用させていただいてます。



アルバン・ベルク四重奏団・ワーナー録音全集 vol.27
アルバン・ベルク四重奏団//ギュンター・ピヒラー(第1Vn)/ゲルハルト・シュルツ(第2Vn)/トマス・カクシュカ(Va)/ヴァレンティン・エルベン(Vc)//マルクス・ヴォルフ(Va)
第1楽章 13:08 / 第2楽章(Andante) 8:25 / 第3楽章 5:05 / 第4楽章 7:31

ヴィオラにマルクス・ヴォルフを加えたアルバン・ベルク四重奏団による第1楽章は、モダン楽器の豊かな音量と潤いある音色が定石通りの移旋により影を落とす場面にキリリと引き締まった切なさでスポットを当てたような特徴を持ちます。

ハ長調の3度・5度・8度・・と渡って行く音列はこの第1楽章を特徴付ける推進力を生み出す印象的なもので、アルバン・ベルク四重奏団の緊張を解かない張り詰めた感じが最後まで飽きさせないK.515番を生みだしたと思います。

この作品はシンプルであり、それだけに難しいものがあると思うのですが、第3期のアルバン・ベルク四重奏団は感情面でも緊張感でもこの作品に現代的な姿を纏わせたと感じています。

ですから、当時の一般的なフォーマット通りのこのK.515番は、聴き手も先の読める安心感で浸ることの出来る古典派の室内楽として美しく響いて来ます。



VIVARTE2 vol.32
ラルキブデッリ
Vera Beths(Vn)/Lucy van Dael(Vn)/Jürgen Kussmaul(Va)/
Guus Jeukendrup(Va)/Anner Bylsma(Vc)
第1楽章 11:28 / 第2(3)楽章(Menuetto. Allegro - Trio) 5:12 / 第3楽章 7:46 / 第4楽章 7:05

第2楽章にK.515の人懐っこいメヌエットが配置される事により、この作品がディヴェルティメントのような実用音楽的な愉悦感を増す事に驚く演奏です。

ですから、前半で楽しく盛り上がり、第3楽章でしっとりと落ち着いた会話のひと時を持ち、挨拶をするように軽やかに締めくくられるこのK.515が最初に持っていた姿は現実味を持ち、モーツァルトの意図したものを感じたように思えて来るのです。

ピリオドの響きは、アルバン・ベルク四重奏団に見る、感覚を含まされた音の意味を聴くという趣と異なり、邪魔しない落ち着いた音で場の雰囲気を楽しむという別の顔を見せてくれるのです。

これら二つの演奏により、趣まで変わってしまう多様さを秘めたK.515が見れた事に新鮮な驚きと、新たな愉しみを感じられた事はとても貴重な体験でした。

最後に、続くK.516 ト短調はやはり第2楽章にメヌエットを持つものですが、第3楽章がAdagioであり、続く第4楽章もAdagio - Allegroと繋がりの自然さを感じるものであるのに対し、今回のK.515はどちらで演奏されても違和感のないものである事も記しておきたいと思います。
関連記事

コメント

コメント(0)
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

よしな

Author:よしな
記事や演奏は主にクラシックですが、自作品はかなり広範なものになっています

フリーエリア

ブログ村に参加しています
どうぞよろしくお願いいたします

フリーエリア